藤岡檀がパトロンとして支えていた、学園のプリンス・時津和彦に、実は隠し彼女がいることを知ったのは、ほんの些細なきっかけからだった。
「ふん…それなら」
彼女は即座に路傍で出会った、金髪の青年を新しい“恋人”に仕立て上げた。
「周防亮一」と名乗るその青年は、聞き分けが良く、プロ意識も高く、いつも雲檀を巧みに喜ばせた。
まるで忠実な子犬のようだと彼女は思った。
その“忠実な子犬系彼氏”の正体が、財界の大物・伊藤グループの御曹司、伊藤将司(シン・エン)だとは知らずに。
芸能界を夢見て家出中だった伊藤将司は、偽名を使い、この奇妙な「パトロン」との関係を観察するうちに、次第に本気で引き込まれていった。
幼い頃、最愛の姉が恋人に傷つけられる姿を見た雲檀は、「愛」を恐れ、信じられなかった。だからこそ、金で縛る「パトロン」という関係でしか、好きな人と関われないのだ。
偽名の青年と、愛を恐れる女性。計算と誤解から始まったこの関係は、やがてお互いの本心とぶつかり合い、すべての嘘が解けた時、二人は「買われた恋」の向こう側にある、本当の愛と、とびきり甘くて恥ずかしい日々を手に入れるのであった。